2015/05/18

生活から生ま

生活から生ま
作家の井伏鱒二は、川釣りを趣味としていた。
彼が川釣りの師と仰いだのは、
明治生まれのジャーナリストの佐藤垢石(こうせき)。
この佐藤垢石は鑽石水、『たぬき汁』などのエッセイで知られる。
なかなかトボケた味のあるエッセイを書いている。
釣りは、趣味の域を完全に超えている。
本人は大酒呑み。
それが祟ってか、借金生活や逃亡生活を送ったりといった破天荒な生活を送る。
そんな生活から生まれた話や食に関する話など、
多才多岐にわたる文章を書いている。
その文章一つ一つ、それぞれに味わい深いものがある。
井伏より十歳ほど年安利長である。
その井伏が『川釣り』という釣りに関するエッセイ集で、
佐藤垢石のことを書いているくだりがある。
それを紹介すると、
「垢石は先ず棹の持ち方から川に向かう姿勢、足の運び方や
鮎のつり上げるメソッドについて私に教授した。
そのとき、垢石は下記のごとき説法をした。
『友釣りの方法はいろいろある安利。この方法は、私の40年の経験から一番すぐれたものだ。
お前もこの方法で一匹釣り上げた。
ところが来年当たりになると、自分の工夫を加え、釣り方を変えてみたくなる。
すると、だんだん釣れなくなる。三年四年でまるでへたくそになる。スランプだ。
ところが、10年目頃には自分の経験から、だんだん形が見えてくる。
それが、今、教えたのと同様な形だ。」
なかなか説得力のある言葉。
どんな世界も垢石のこの言葉が当て嵌まるような気がする。
まさに、それに続けて垢石が言った言葉、
「文章道でもいろいろ工夫してみるだろうが、
結局は、松尾芭蕉は立派だというところに帰ってくる。」

Posted by にねにぬ at 11:35│Comments(0)
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